『まりこ』は、行方不明になった人物、「まりこ」の像を結ぶ試みである。

　「まりこの友人」はまりこの身体的特徴を「パフォーマー」に伝え、「パフォーマー」は伝えられた情報をもとに「まりこ」の似顔絵を作成する。似顔絵作成と同時にスクリーンに「まりこ」の所持品や住んでいた町に関する情報が示される。また、似顔絵パフォーマンスの最中にきこえてくる「声」が「まりこ」に関するエピソードを語り始める。しかし、「声」が語るエピソードは次第に「まりこ」ではなく、とある都市伝説に関する物語へと移行していく。

　こうした複数の視点から語られる「まりこ」の人物像は確固たるものではなく、想像の余地を発生させる。勝手に膨らんでいく行方不明者「まりこ」の人物像は哀しさや切なさを与えるだけの装置と化していく。

（文・絵：徳永綸）